モーツァルト:交響曲第38番&第39番&第40番&第41番







サヴァリッシュはシュターツカペレ・ドレスデンとのシューマン交響曲集が素晴らしい名盤なので、

このチェコ・フィルとのモーツァルトはどんなものだろうと聴いてみたところ、これもまた凄い演奏だった。

よくインターネット上などで見る「名盤10選」とかに入ってるのを見たことないけど、全く不思議です。


まず印象的なのは、とにかくテンポが快速。曲によったらカラヤン盤より速いかもしれない。

シューマンの交響曲集でもこのような颯爽としたテンポで、ややもすると錯綜している楽曲の構造を

分かりやすく眼前に提示してくれていたが、この演奏でもそのような路線は同じと言える。


シュターツカペレ・ドレスデンは氷を削るような、シャーッという感じの高音が特徴的だが、

ここでのチェコ・フィルは裁ち鋏で紙の束を切るような、ジャリッジャリッといった感覚だ。

この硬質な音響がまた心地よい。ふくよかな厚みのある音を楽しみたいときにはまた別のセレクトになるだろうが、

演奏・録音ともに優秀な本盤は、特にあまりクラシック音楽に親しみのない初心者向けとしても最適だと思う。



2019/05/11(土) 15:20 PERMALINK
モーツァルト:後期交響曲集






クーベリックとバイエルン放送響による後期交響曲集。

この演奏、実はかなり特徴的な部分がある演奏だと思うのだが、

あまりクラシック音楽に親しみがないような人が聴くと、おそらく

上品で丁寧だけれど特に訴えてくるものもない、BGMのような感じに聴こえてしまうと思う。

それくらい「大人しい」演奏ではあるのだが、ではその特徴的な部分とは何か・・・?


上手くは説明できないのだが、なんだか、じめじめしてたりとか暗くはないのだけど、

盛り上がる場所でも決して熱さず、すぐにふっと口をつぐんでしまうような感じがある。

全体のベースとなるトーンとして沈黙があって、常にその上で音楽が鳴っている。

テンポも遅めだが、それ以上に音の間(ま)とか、消え入る弱音が印象に残る。


この演奏で40番のメヌエットを聴くと、晩年の秋、ベンチに独り座っているような情景が連想されてきた。

このいかつい曲からそのような風景を見たのは初めてだったので、とても貴重な演奏だと言える。


2019/05/11(土) 14:58 PERMALINK
モーツァルト:後期交響曲集







カラヤンとベルリン・フィルのモーツァルト後期交響曲集は、EMIのとDGのと二種類あるが、

これはEMIのほうのレビュー。録音場所であるイエス・キリスト教会の残響がふんだんに入っている。

DGのほうは、カラヤンの音楽観をモーツァルトという媒体で極限まで追求したといった趣だが、

こちらは、モーツァルトの音楽をカラヤンの方法論で最大限に再生したという感じ。

どちらにも共通して言えることだが、後期の曲に特有の、感情的なタメを入れたくなる部分でも

全く意に介さないと言わんばかり、他の部分と同じようになめらかに演奏しきっているのが凄い。

それと関連して、テンポも相当に速い。特に36番(リンツ)なんかは他では聴けないほど速い。

細かい部分は聞き取れないレベルだが、豊かな残響もあって、音の塊に包まれる快感が素晴らしい。

モーツァルトの交響曲については、特定の感情を表そうとするような解釈は似合わないと思っているが、

ここまで、内容によって展開を変化させず音響だけにこだわった演奏もやりすぎのような気がする。

だが音の洪水の快感に負けて何回も聴きたくなってしまう。これはこれで素晴らしい演奏。


2019/05/11(土) 14:35 PERMALINK
モーツァルト:交響曲 第28、33番








押し付けがましい何かや、深い何かが全く存在しない。

何も見たくなく、何も感じたくないときに最適な音楽。

モーツァルトの楽曲も後期のものになればなるほど陰影に彩られるが、

ここで聴かれる初期~中期の楽曲にはそのような影を作り出す心の襞もない。

シュターツカペレ・ドレスデンは氷を削り出すような手触りの弦の音、

それによって作られた、真っ白に晴れ渡った寂しい世界。

なぜだか、不思議と懐かしいような感じがするのだ。

2019/04/28(日) 15:17 PERMALINK
モーツァルト:交響曲第39番、第40番、第41番  








モーツァルトの最後の3つの交響曲。

これら3つで一つの連作のようだとも言われるが、通俗的なイメージとしては、

39番:白鳥の歌

40番:疾走する悲しみ

41番:堅牢で巨大な構築物

みたいな感じだろう。中でも40番は冒頭のメロディがかなり有名な代表曲だ。


最近これらの後期3大交響曲を集中的に聴いていて、感じたのだが

短調の40番はそこまで激情的ではなく、音だけの精密機械のような聴き方をしても面白いこと。

また、39番と41番は、意外と通して聴いた時の印象が似ている、とまではいかないが、

共通した聴後感があると感じた。どちらも第2楽章が楽曲の中心であると感じる。


モーツァルト特有の、なんとも不思議な寂しい長調。そこからの移ろい。

まっさらな空の下の白い建物。薄笑いしながら落伍していく人生。

この世に自らの魂の居場所が金輪際存在しないことの気づき。

そしてそれすらもどうでもいいこと。



41番ではこの第2楽章が曲全体の構築性から浮いている感すらある。

むしろ他の3つの楽章が浮いているのか。


スウィトナー指揮のシュターツカペレ・ドレスデンは最高の響きだ。

カンナか何かで氷を薄く削ったときのような感覚。

削られた氷はすぐ水になって、永久に戻ることはなく流れていく。





2019/04/27(土) 16:37 PERMALINK
「伝統邦楽 特選シリーズ」 雅楽








過去にレコード等で出た音源を、曲目等入れ替えてCD化した商品は結構ある。

以前にレビューした雅楽CD https://62104.review.wox.cc/entry14.html もそうで、

1961年に日本コロムビアから出たレコードをCD化したものである。

実は、今回レビューするCDの3~7曲目は、上のCDの2~6曲目と全く同じ音源である。

ではなぜ改めてレビューで取り上げるのかというと、今回の編集版の1・2曲目(萬歳楽・蘭陵王)

が、今までCDではリリースされたことがない初出の音源だと思われるからである。

音質や演奏の傾向から、おそらく録音年代は上のレコードと同じ(50年代~60年代)と感じる。

過去に日本コロムビアからリリースされた雅楽レコードの曲目を調べてみても、

今回の萬歳楽・蘭陵王は含まれていないので、この音源の由来が気になるところである。

未だCD化されていない音源が他にも存在するとすれば、すでにCD化されている音源と抱合せにするのでなく

体系的なリリースを望みたいところである。

2019/01/24(木) 12:12 PERMALINK