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ヴィヴァルディ 二挺のヴァイオリンのための協奏曲op.3-8 メンゲルベルク&ACO







しれいかんさま。

貴方様へのお手紙を、この懐かしい呼び名で始めることをおゆるしください。

しかし、ほんたうに貴方様はわたくしにとつての司令官様なのでありましたから。

いえ、わたくしたち姉妹はみな胸の内では「しれいかんさま」に秘かなあこがれを持つておりましたのです。

眩いやうな第二種軍装の白に身をつつまれた貴方様を一昨年、加瀬の駅でお迎えした際に

子供時分の水兵さん遊びが現実になつた、というとお怒りになるでせうが、

そのやうな幻想的な、非現実的なあこがれが、「しれいかんさま」という響きとともに

恋、お恥づかしうございますが、そのはつきりとした形でわたくしの中に示された事を感じたのでした。

それより少し前、貴方様が兵学校に進学され郷里を発たれるきわに、「春ちやんは可愛いなあ」

と、姉様達に気後れし一言も発せなかつたわたくしの両脇の下を持ち上げ、

むかしなつかしい「たかいたかい」をしてくださつたこと、姉様達も見ている前なのに、

子供あつかいは恥づかしい、もうそのやうな歳ではないのに、と赤面する一方

秘かな優越感のやうな、そんな気持ちになつていたことも告白せねばなりません。

貴方様の高野山の御守りも今でもだいじに持ち歩いております。



予断をゆるさぬ状勢下ではありますが、このやうな小さい思い出は日々を生きる糧です。

貴方様は御立派に軍務を全うされていることと存じます。

御存知のことでせうが、加瀬の里にも適性合致者がわたくしたち姉妹を含め、複数人選抜され

わたくしたちでも、此の世界全体への未曾有の受難に対し、少しでも力になれると信じております。

いつかお会いできるのか、さうとすればどれくらい先なのか、そればかりが先に立ちますが、

きつと同じ時代で、同じ国で斯うしてお互い生きているのですから、二本の線のやうにまた交わることもあるだらう、

いえ、きつといつの時代でどこの場所であつてもさうだ、

こんな哲学的形而上的運命、を信じてもよい気持ちになつているこのごろです。

さういえば、わたくしにビオロンを教えてくださつたのも貴方様でありました。

二挺のビオロンのためのコンセルトを、第一ビオロンの貴方様を頭の中で鳴らしながら弾いて、悦に浸るわたくしであります。

もしかしたら、もしわたくしたちがまたお会いして、二人でそれを弾いたとしましても、きつとそれよりも美しくはならないと

思えるほどの、その甘美でかなしい音楽をききながら、今もこの筆をとつております。



しれいかんさま。

貴方様がほんたうの司令官様になるまえに、少しだけそれこれの昔話を取り出してみたくなつたのでした。

いつまでも貴方様の春ちやんでおります。

ごきげんよう。






(艦これ「春風」と「メンゲルベルク指揮のヴィヴァルディ」から着想した二次創作的レビューです。)

https://youtu.be/WU6cCh_fNF4
2018/04/27(金) 13:53 PERMALINK
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