雅楽名曲集







日本の風物であったり文学・音楽の特徴として、
四季の変化との強い結びつきが挙げられると思うが、
雅楽ももちろんその例外ではない。

雅楽においては、各々の楽曲の属する音楽上の基調として、
壱越調
平調
双調
黄鐘調
盤渉調
太食調
の6つの「調子」がある。

この「調子」、西洋音楽でいうところのキー(ハ長調とかイ短調というような)と同じような
概念として理解すれば良いと思うのだが、それと大きく異なるところは
それぞれの調子が、特定の季節や方角・時間などと結び付けられているところだ。

西洋音楽においても、ハ短調は悲劇的とか、変ホ長調は英雄的というような
イメージが各調にあると言えないこともないが、
移調したときにもちゃんとその曲はその曲だとわかる。
平均律のおかげで、移調しても曲のなかでの音高の関係は変わらないからだ。

雅楽においては、移調(「渡物」と呼ぶ)することによって
曲のメロディー自体が変化してしまう。
理由は楽器自体の制限によるところが大きい。
篳篥などは1オクターブと少しの音域しか出せないし、
龍笛では西洋の12音階でいうなら安定して出せるのは5音のみで、
その他の音は変化しやすい不安定な音階として表現される。

それはともかく、そのような制限の結果として
各調子に特有の旋律や流れが生まれることとなり、
それぞれのカラーが存在するわけだ。
昔の人はそれを、身近な季節の表現に当てはめたのだろう。

さきほどの六調子においては、
壱越調=土用
平調=秋
双調=春
黄鐘調=夏
盤渉調=冬
という割当てがなされている。(太食調は実質的に平調とほとんど同じ。)

だが、実際に現在よく演奏される雅楽曲では、
壱越調と平調がずば抜けて多く、その次に盤渉調が来るという感じで、
黄鐘調や双調の楽曲は目に見えて少ない。

ここでようやく今回のCDのレビューに入るのだが、
こちらの録音では、その滅多に見ない双調の曲がたくさん含まれているのが聴き所。
演奏は雅楽の原点にして頂点の宮内庁楽部。悪いはずがない。
構成は前半が双調の曲、後半が平調の曲という春秋セレクトだ。
テンポの早い曲が含まれていないことも相まって、
たゆたうようなまったりした空間が大変心地よい。
雅楽の大きな一面である、アンビエント的な部分がフォーカスされたCDといえる。

まさに「春のやよいのあけぼのに・・・」といったところか。
後半の平調の曲のなかには、定番曲である越天楽や陪臚も含まれている。
BGMにしても良いし、聴き込んでも発見があるし、雅楽入門用にも最適だと思う。

ところで、Amazonで見つけやすいこちらのCD↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0007WZYB6/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_FsjnBb0W3BE19

これは、今回紹介したCDから「甘州」だけを抜いた同一音源のものである。
(なんで抜いてるのかは不明)
今回紹介したCDの方が一曲分多くてお得である。

2018/06/28(木) 16:22 PERMALINK